ヤツは不良のくせにウルトラマンのような奴だった。
強きを憎み、弱きを助ける。
ある夜、暴走族の集会に出くわした。
たった1台のバイクを大勢で威圧してきた。
「気にいらネェ・・。」
大勢で個人を威嚇する・・ヤツが一番嫌うパターンだ。
俺の制止もきかず、ヤツはなんと・・ウィリーで暴走族のど真ん中に突っ込んでいった。
怒った暴走族は集団でヤツを追った。
しかしヤツは峠のチャンプ、追いつくはずがなかった。
かなりの距離を走った。
山の上の一本道、山の上の霊園が行き止まりだった。
大空の星を眺めながら、俺たちは互いの未だ見えない未来について語り合った。
暴走族はさすがにここまで追ってこなかった。
俺達は山を降りた。
峠の途中で1台の族車が路肩に止まっていた。
ヤツは俺の制止を振り切り、スタスタと族に近づいていった。
大喧嘩になるかと思いきや・・
「バイク、故障してんのか?」
いきなり奴はその場に座りこみ、
「 ダセェ・・イジり方してんな。。 」
ヤツは散々、文句言いながらも・・族車を修理し始めた。
”強きを憎み弱きを助ける”
・・不器用ながらもヤツはその言葉のまんまのような生き方をしていた。。